日本の伝統芸能とは
事務局長 森田による伝統芸能の掴み方、楽しみ方

その11 伝統芸能に関わる言葉:役者らの職業名

能と狂言に関わる役者、音楽の演奏者「能楽師(のうがくし)」 その中でも詳しくは、能楽の主人公やストーリーナレーションを謡うシテ方(してかた)、ワキ役を演じるワキ方(わきかた)、狂言を演じる狂言方(きょうげんかた)、音楽を演奏する囃子方(はやしかた)に分かれている。
 
文楽に関わる役者達「技芸員(ぎげいいん)」 詳しく言う場合は、義太夫を語る「大夫(たゆう)」三味線弾きは「三味線(しゃみせん)」、人形を遣う「人形(にんぎょう)」)
 
歌舞伎に関わる役者達は「歌舞伎役者(かぶきやくしゃ)」 歌舞伎で演奏される音楽の演奏家は、担当する音楽のジャンルによって「長唄(ながうた)さん」「義太夫(ぎだゆう)さん」「清元(きよもと)さん」などと呼ばれる。
 
日本舞踊に関わる舞手「日本舞踊立方(にほんぶようたちかた)」 演奏者は「地方(じかた)」
 
組踊の役者は「組踊立方(くみおどりたちかた)」 演奏者は「地謡(じうたい)」
 
琉球舞踊の舞手は「琉球舞踊立方(りゅうきゅうぶようたちかた)」 演奏者は「地謡(じうたい)」

その12 印象深い舞台:能

その10で「型」を重んじて表現する能について、型を正しく演じることで却ってより大きなものを表現出来る仕掛けについて書いたが、ここでは私の個人的な印象深い舞台について具体的に書くことで、この仕掛けについて考えてみたい。
友枝昭世という人間国宝の能楽シテ方の先生がいらっしゃる。この先生は、ひたすら「型」を追求する演じ方をなさるので、他の人の演じる能は観ないけれども、この先生だけは観る。というようなファンが沢山いらっしゃる。そういうファンの人達は「友枝先生の能は分かりやすい」と言う。
私が友枝昭世先生の舞台で得に印象深い作品に、『実朝』や『邯鄲』がある。実朝は源実朝を主人公にした作品で、若くして従弟の公暁に殺されてしまう実朝が詠んだ和歌がモチーフになった作品。『邯鄲』は中国から来た故事、王様になり栄華を極めた夢を見たが、それも一炊の夢であった、という内容の作品。私は20代の頃にこれらの舞台を観たのだが、将来やボーイフレンドの事での悩みを持っていた自分に、人生を達観したような視点を体感的に感じさせてくれる舞台であった。その結果、何かそれまでの自分にはなかった視野からその時の悩みを決断することが出来た。この時が、私が舞台から自分の日常に大きな影響を受ける、言い換えると舞台と自分の日常とがつながる経験をした最初であった。

その13 能楽小鼓から読み解く能楽のこころ:能楽

先日能楽小鼓方の大倉源次郎先生と伝統芸能の道具ラボという能楽や歌舞伎の舞台上で使用するお道具の調査、復元プロジェクトなどを行っていらっしゃる田村民子先生による講座が行われた。小鼓から能楽のこころを解説して頂いたが、大変興味深かった。
 
小鼓に描かれてある絵柄は、中世に作られた古い物では、自然と人工物、春と秋など2つの対極的なものを同時に描き、中庸を求める思想があるとのこと。例えば、桜(自然/春)と鳴子(人工物/秋)。能楽が誕生し、発展してきた時代に、それまでの信仰とは異なる仏教が輸入された。その際に、神仏習合の発想を生んだのが、役行者。権現思想を説き、日本の神様は仏教の仏や菩薩が仮の姿で現れた権現であると説明したそうです。この権現思想(本地垂迹説)では、神様と仏様を水と波に例えて、同じものだが現れ方が異なったものと説いていますが、能楽の台本にも「神と仏は水波のへだて」という言葉がいくつも登場するとのこと。(養老、道明寺など)小鼓の絵柄からも能楽の深い精神が現れていることが分かり、お道具に対する見方が深まりました。

その14 新『文化芸術基本法』

日本の文化芸術全般に関する法律として平成13年に議員立法により成立した「文化芸術振興基本法」。成立から16年を経て、2017年6月23日に「文化芸術基本法」として改正が行われた。
改正の大きなポイントとしては、今までの縦割り行政を改善し、各府庁と協働で文化政策を推進することを法律としておさえていること。文化芸術の枠の拡大。
また「稼ぐ文化」への新たな展開を推進するため「文化経済戦略」を策定(平成29年度中)とのこと。
法律として「文化」の幅が拡大したことや各府庁との連絡が押さえられたことは素晴らしいと思う。「稼ぐ文化」への新たな展開については、どのような戦略を立てるのか楽しみである。
私が文化庁に望むことは、国民一般に「文化が誰にとっても必要なもの」「あなたの心の健康に役立つもの」「あなたの人生にとってよりよい生き方のヒントを得られるもの」として広く認識してもらう啓蒙活動を行ってもらいたい。
具体的な戦略は、今まで個々の努力で行って来た企業のメセナ活動、NPO活動等々のノウハウを集め、予算を当てれば即効性の高い活動が出来るのではないか?
文化庁の本気度に期待したい。

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